「日々の指針」
ー 西園寺 昌美 著
心のバランスを
1.
人は繊細で神経質だけでもいけない。かといって大雑把で荒々しいのもよくない。
何事も中庸を得ていないと立派な人間とはいえない。前者はあまりにも人の心を気にしすぎて自分が疲れるし、後者はあまりにも人の心を無視して人の心をいらだたせる。
何事もどちらか一方に偏りすぎると、必ずバランスが崩れてしまって、よい結果が得られないものである。
2.
どんなことがあっても人とは対立するものではなく、柔和に打ちとけあってゆくことである。どんな人にでも自分の心の中に、闘争心や対立心が潜んでいるものである。
それをまともに人にむけず、強い心で己れをコントロールし、まず自分自身に打ち克つことである。そして人と対することである。自分に都合の悪い人でも、心和やかに対処すると、かえって予想もしない素晴しい結果を招くことになる。
3,
正岡子規は「さとりとは、いかなる場合にも平気で死ぬることかと思っていたのはまちがいで、さとりとは、いかなる場合にも平気で生きていることであった」といっている。
全くその通りであって、完全に生を完うすることによって、はじめて死をも完う出来得るものである。生を逃避することによって、死への恐怖を拭いさることは不可能である。生への恐怖を乗り越えることによって、死への不安はまったく無くなる。
生と死とは別なものではなく全く一つのものである。
4.
現在あなたに与えられている職場に、強い誇りを持つことが、あなたの未来において大いなる祝福をもたらす鍵となる。常に職場に対し不平不満を抱いている者は、職場にとって歓迎せざる者である。即刻退めるべきである。こんな不平不満のある人達を抱えこんでいる職場こそ、気の毒である。どんな場も自分の想い方次第で、いかようにも変わるものである。たとえ今置かれている立場が、自分に合わない場であったにせよ、その与えられた場に誇りをもって生きるよう努力していけば、ある時点で全く不思議なことに、本当に自分がその職に対して誇りを持って生きていることに気がつくのである。心からその職に対して誇りをもって働く人は、必ず報われるものである。
※正岡子規: 日本の明治時代の詩人で、俳句と短歌の近代化に影響を与えた国語学研究家。